ここでは、ご提供して頂いたアヴァリスの小説を掲載しています。
目次
1.『死地からの突破口』 著者:松田 草介
2.『大いなる賭け』 著者:Nemo
アヴァリス小説版
『死地からの突破口』 著者:松田 草介
18人目の敵兵の首を斬り飛ばすと、レルゴン隊長は愛用の武器、ロングソードに染
みた血を振り払った。
戦闘開始からおよそ半刻、アヴァリス軍の不利な状況は変わってはいない。
百戦錬磨の猛者がいたところで、二倍以上もの敵軍を相手にしては勝利はさすがにま
ず不可能だろう。
そう、今回の戦闘は始まった瞬間勝利する側は決定していたのだ。
エネムド軍800に対して、アヴァリス軍はすでに400に満たない。
もちろん、戦争とは兵の数のみで勝敗が決まるものではない。しかし、その他、戦闘
の勝利の鍵を握る要素は今回、ことごとく敵軍の優位にあった。
戦地は、エネムドの首都に近いオルゲンの丘。そして風向きは東、敵の軍勢は風とと
もに、怒涛のように押し寄せてくる。
レルゴンは周囲に敵がいないことを確認してから、己の命を守る盾を、じっとみつめ
ながら思った。
戦争が勃発した12年前からひたすら戦い、走り続けた人生が、もうじき幕を閉じよ
うとしている。
アヴァリス軍は、兵力増強後、4連勝するまでに至った。しかしそれも、エネムド側
の策略だったのかもしれない。
アヴァリスに勝利の甘い蜜を与え、じわじわと自国の本拠地から目と鼻の先、オルゲ
ンへと導いてきたのだ。
4度の戦いに勝利し、12年目にしてようやく敵地深くへとたどり着いたアヴァリス軍。
そこが、自分たちの墓場になるとも知らず。
レルゴンは残った兵士たちを自分の周囲に集めた。
総勢15名。どの顔も、すっかり疲労に満ちている。
今作戦の将軍の愚かさをここで愚痴しようと、戦況は決して変わるはずもない。
レルゴンは自分の部下たちに、疲れをなるべく隠していった。
「撤退の準備だ」
一人の兵士がぎょっとしてレルゴンに言った。
「それは、将軍様からの伝令でありますか?」
「いや、私の独断だ」
周囲がざわめく。レルゴンは部下の中で最も信頼を置いている弓兵、シリオンに向
かって言った。
「シリオン、お前の意見を聞きたい」
シリオンは、蒼ざめた表情をしていた。
「将軍ではなく、レルゴン隊長の一任なのですね」
レルゴンはうなづいた。
「私は、将軍の命令よりも、隊長の意見をとりいれます」
そして周囲を見渡し、
「異論はあるか?」
誰一人、口を開かなかった。開けなかった、かもしれない。
それぞれ武器と防具を身につけてはいるが、戦意はまったく感じられなかった。
「よし、それでは向かうぞ」
レルゴンが北を指さすと、、シリオンが言った。
「隊長、撤退するのではなかったのですか?そちらは今現在、最も危険な方角です。
エネムド軍の主力部隊が陣をとっております」
「私に任せればいい」
その一言で、レルゴンの部下たちはしん、と静まり返った。
この屈強の戦士は、目で仲間たちに呼びかけた。必ず15名とも救う。彼の瞳はそう
言っていた。
シリオンは思った。この隊長の部隊に参加して早一年。これまで様々な苦境を、隊長
とともに超えてきた。
レルゴンという男は、剣術に長けているだけでなく、知恵も優れている。
前回も、その前の戦いも、決して剣のみで勝利してきたわけではない。
レルゴン隊長には、豊富な戦術知識と、まるでアヴァル神の加護を受けているのでは
ないかと思えるほどの幸運を持ちえている。
今回、この絶望的な戦闘においても、きっと突破口を開けるはず。
シリオンは弓を背中に背負い、隊長と、自分を含め15人のアヴァリス兵士とともに
北へ向かった。
オルゲン北部は、まさに死闘の最中であった。
距離にして70メース。アヴァリス軍とエネムド軍が、まるで絡み合うように戦いを
繰り返している。
断末魔の叫び、剣と剣の交じり合う音、宙を飛び交う弓矢。
肉眼でも、確認ができた。圧倒的に赤いローブの兵ーーエネムド軍ーーの数が多い。
レルゴンはロングソードを空に向けて突き出すと、その後を追ってくる15名の兵士
へと伝えた。
「一点突破だ!敵に構うな!ひたすら我があとをついてくるのだ!」
命令承諾の声が、レルゴンの後方からあがった。
レルゴン隊長は走った。血と叫びの交じり合う、地獄絵図のような場所へ。シリオン
が赤の兵に向けて弓を握ると、レルゴンは制した。
「攻撃などしなくともよい!全力で駆け抜けろ!」
シリオンはうなずき、弓をしまった。
レルゴンの部隊に気づいたエネムド兵たちが、怒涛の勢いで押し寄せてくる。レルゴ
ンが叫んだ。
「全員、盾を眼前に出せ、武器など抜くな」
エネムド兵がレルゴンに飛びかかる。レルゴンは、ラウンドシールドを構え、強引な
力押しで兵士を転倒させた。
それにならい、他のレルゴン隊兵士も、隊長のように盾で敵兵を押し退けた。
レルゴン部隊は完全に死闘の渦中へと入った。しかし、レルゴンはまだ剣も抜かず、
盾を前に構え走り続けた。
味方が参戦にきたと、アヴァリス軍は勢いづいた。だが、レルゴンは味方の部隊さえ
も盾で押し退けた。
戦闘の中心部まできて、ようやく、レルゴンはロングソードを抜いた。そして、瞬時
に一人の兵の首をはねた。
アヴァリス軍将軍、ファイロンの首を。
アヴァリス軍はもちろんのこと、エネムド軍もこの行動に不意をつかれた。
レルゴンはファイロンの首を赤の軍へと放り投げると、より勢いを増して駆けた。
敵の将軍の首を投げつけられ、唖然とするエネムド軍。レルゴンたちの勢いは止まらない。
その先にあるのは、急な下り坂だった。
「盾を地面に落とすようにして降下せよ!」
シリオン以下、15名はその指示に従い、一斉に下り坂を降りていった。
その後、戦争の行方がどうなったかは知らない。
おそらく、レルゴンの予想通り、アヴァリス軍の惨敗だったであろう。
しかし、レルゴンの望みは達成できた。
15名の部下は、無事アヴァリス首都へと生還できたのだから。
戦争の勝敗よりも、自分の部下の命を選ぶ。
それが軍隊長として正しい行為かどうか。
それでも、シリオンは望んだ。
この戦争がどうなろうと、自分はこの先も、この恐れ知らずの男とともに戦い抜こうと。
F I N
『大いなる賭け』 著者:Nemo
ケイはそれを見つめていた、
当初、敵の数(エネムド軍)は、150人から、多くて180人だと聞いていた、
見方(アヴァリス軍)の数は約300人、十分余裕で戦えると聞いていた、
ケイはそのことを自分の部下、14人に伝えた、「やがて敵がくる、だが150人程
度だ、心配ない」
ケイの部下の一人、ドラフは、東側から、太陽が昇り始めたと思った、が、
それはだんだん大きくなり、やがてその「太陽」は、赤い服装で身をまとっているよ
うに見えた、、
そう、アヴァリス軍の敵、エネムド軍だったのだ。
ドラフはこの戦争がはじまったときから、隊長ケイの部下だった。
いつもは冷静で戦いをしているドラフも、このときばかりは冷静さを保っていられな
かった。
敵の数は、350人、いや、400人いるように思えた。
ケイは愕然とした、敵の数よりも、総大将のルトベンがそのことをごまかしていたこ
とに腹が立った。
ケイの周りにいる隊長たちも、「何があったんだ?」という顔でそれ(敵を)見てい
た。
敵との距離は約300メートル程度、そろそろ行動を起こすときだ、ケイは叫んだ、
「アヴァリスの血を引くものたちよ!我に続け!!」
ケイは自分の武器、エクスカリバーを引き抜くと、敵に向かって突進していった、ケ
イの部下もそれを見習った。
敵との距離はぐんぐん縮まっている、200メートル、150メートル、100メー
トル程でケイは立ち止まった。
「弓兵、やつらを狙え!!」
部下の一人フォーカスは、一本の弓矢を手にとると、一人の敵を狙った、彼の的(つ
まり狙った敵兵)は、バタリと地面に倒れた、
その周りにいた敵兵達が、いっせいに弓矢を取り、弓矢を打った、打った音は目で見
なくても音でわかった。
ケイはその音を聞いていた、やがてその音はだんだんと自分達の方向へと近づき、つ
いに自分の周りの見方達に命中した、
今のでケイの部下は、5人がやられた、その時、「全員盾を斜め前方に向けろ!!」
ドラフが叫んだ、ドラフはもう何年もこの戦争をやっているため、ある程度の常識
が、彼にはわかっているとケイは確信していた、
ケイは突進してくる兵士達を見つめていた、ケイは叫んだ、「盾を前に向けろ!敵が
くるぞ!!」
最前線にいたケイは、一番に敵が盾にあたって来たのがわかった、ケイは盾をどける
と、敵を一刺しした、
どこでも同じようなことが行われていたが、ケイがいたところは、比較的おだやか
(敵の数が)だった、
一番悲惨だったのは、アヴァリス軍の総大将がいる地域だった、ルトベン(総大将)
がいるあたりは、
敵が約300人は軽くいた、
ケイのいた場所は、味方約50人、敵約70人といったところだった、ケイは大声で
前に出すぎるなと忠告した、
一人の兵士が敵兵めがけて弓を放ったが、それがケイの部下、フォーカスに命中し
た。
ケイはその一部始終をみていたが、呆然としていた弓を放った兵に、敵からの弓矢が
左眼に命中した。
目の前には敵兵の隊長がいる、とても愕然としている、まだ隊長になったばかりのよ
うな人間だった。
ケイは彼に突進し、首を切った。
新兵の隊長は、死んだ、それを見ていたエネムド軍約40人(戦いで数が減った)の
うち、約半分が逃げ出した。
残りの半分の兵、約20人程度は、アヴァリス軍に取り囲まれ、集団処刑よろしく弓
矢が打ち込まれた。
ケイは部隊の人数を確認した、弓兵3人、剣兵8人、だいぶ人数が減ってしまった。
丘の上にたったケイは、自軍の総大将がやられそうになっているのが見えた。そこ
は、敵兵約270人、
味方は140人程度だった。
ケイは回りの隊長たちにあそこに行こうといった。
彼らはみなうなずいた。
もう戦闘は一ヶ所に集中している、彼らは自軍の総大将にぐんぐん近づいていった。
総大将(ルトベン)の軍が、どうしてここまで生き残っていられたのか・・・、ケイ
は多分特別な訓練を受けていたからだと確信した。
近づくにつれ弓矢がどんどん飛んできた。
雨よろしく飛んでくる弓矢に、部下達は盾で身を守るしか方法がなかった。
ケイはルトベン(自軍総大将)のところまで行き、話し掛けた。
「どうなっているんですかっ?」「敵は180人前後と聞いていたのですが!」
ルトベンは答えた、「とにかく戦え!!」
「隊長を狙うんだ!!」
ケイは自分の部下達に叫んだ、「隊長達を狙うんだ!!」「ほかのやつらはどうでも
いい!」「とにかく隊長達をねらえ!!」
ケイの部下達はみなうなずいた、
部下達はとにかく盾で身を守りながら、敵の隊長達をめざした、ドラフが横にいた兵
士を一人殺した、
ドラフも全員血まみれになっていた。
全員疲れきった様子だった。
自軍の他の隊長たちも、全員敵の隊長を殺しに、盾で身を守りながら前進した。
あちこちで敵軍の「声」が聞こえた、
「隊長がやられた!!」「早く逃げよう!」「まだ戦うんだ!!」「もう無理で
す!!」
ケイはその声を聞いて一瞬微笑んだ。
ケイは覚悟を決めた、逃げられる前に、敵軍の総大将、に向かうよう、部下に命令し
た。
自分の部下の一人が弓を放った }それが総大将に命中した。
覚悟を決めたケイは、総大将の首を切った。
瞬間、前進の力が抜けた。
これで終わった・・・。
しかし戦いはまだ終わらない。
彼らには次の戦争がまっているのだから・・・。
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